【本の感想】豊﨑由美『ニッポンの書評』

豊﨑由美『ニッポンの書評』(光文社、2011年)を読みました。

著者は書評を多数連載しています。著書もあります。そんな著者が、2011年時点の小説書評について、どのように考えているかを知ることが出来ます。

今はインターネットを通じて気軽に書評・レビュー・感想文を伝えることが出来ます。帯に書かれているように「一億総書評家時代」です。書評を生業にしていないにしても、書評・レビュー・感想文をブログなどで公開しているのであれば、必読書とまではいかなくても一読の価値はあります。

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あくまで書評を生業とする一書評家の考え

書評の役割

小説という大八車を押すことが書評の役割としています。そのためか、売り上げを落とすような書評には否定的です。私はお金を払った以上、節度を守った上で好きにして良いと思っているので、こうも縛られるのは窮屈です。

書評は推薦文ではないはずです。

書評は読者のためにある

とはいえ、共感するところもあります。第3講のタイトルどおり、書評には読み物としての面白さはあった方がよいです。読者に楽しんでもらう姿勢を持ち、芸にまで昇華できればいうことないです。

要はどこまで読者を楽しませるか、その本を読んでみたいという気持ちに出来るかということです。

匿名レビュー

匿名に対して厳しい目を向けています。匿名を隠れ蓑にして悪意ある書評以下の書評を書くことで著者を傷つけたり、売り上げに悪い影響を与える輩に対して、営業妨害という言葉が出るほどです。これは、著者が書評を生業にしている立ち位置だからなのでしょう。

インターネットだから匿名は当たり前であり、作家にしてもペンネームがあるのだからその意味では同じはずです。そして、選別された上で本が世に出て収入を得ているのであれば一定の非難は質はともかくとして避けられるものではありません。

誰しも誹謗中傷や悪意は受けたくはありません。それでも老若男女に好評で、非難されないような作品を世に出すのは不可能でしょう。それにリテラシーの低い書評に反応するのはリテラシーの低い読者です。リテラシーの低い書評が営業妨害になるとは考えにくいです。

そのため、一読者であり消費者からすると、匿名性を問題にして攻撃する姿はずいぶんと驕っているように感じました。既得権にしがみついているようにも見えます。

☆3

本書はニッポンの書評ではなく書評を生業とする豊﨑由美の小説書評エッセイです。なぜならば、ネットではネタバレを避け、売り上げに貢献する書評を実名で書かなければならないからです。そうでないと著者から非難されてしまうからです。

それでも上記のような文章を書いてしまうほどの燃料になる本です。そのため、必読書とまではいかなくても一読の価値はあります。

他にも文字数や日英書評比較、新聞書評比較など興味をそそられる内容もあります。それでも著者の姿勢に驕ったものを感じてしまったため、色々と台無しになりました。残念です。

ちなみに最も「ニッポンの書評」を感じたのは大澤聡との対談です。過去と現代と著者の主張とをうまくまとめています。

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