【本の感想】ダグラス・ケネディ(著)中川聖(訳)『仕事くれ。』

ダグラス・ケネディ(著)中川聖(訳)『仕事くれ。』(新潮社、1999年)を読みました。

約束された昇進は失業により失われます。昇進を見越した激しい浪費の先にあるのは借金と妻との関係の悪化です。そんなどん底状態から抜け出すために新たな仕事を獲得するのですが、そう簡単には元の生活に戻れません。

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アメリカ的ビジネス環境

前著の『ビッグ・ピクチャー』でもそうですが、アメリカというのを感じます。それは借金を気にしない浪費であり、ビジネスで成果を問われる厳しい姿勢であり、企業買収とともにやってくる突然の失業です。

イケイケのスタイルはアメリカを象徴しているように思います。

失業からの復帰

印象的なのが失業時のプログラムとはじめの再就職です。再就職支援会社で訓練を受ける描写は妙にリアリティがあります。次の個人向けにパソコンソフトを電話で売る仕事は職場環境が最悪です。言葉の暴力で威圧し、ノルマを積み上げる最悪最低の上司が重宝されており、同僚たちはそんな環境を諦めて受け入れています。

しかも稼ぎは大幅に減り、元の生活に戻れる見込みは立ちません。そんな焦りと失意の状況はは読んでいてつらいです。さらに元部下の不幸も重なります。

部下思いで倫理的な主人公と、そうでない人の対比が終始描かれています。簡単に行われる首きりは、ある種のアメリカを象徴しています。

前半と後半は異なる

そのことを利用するクズは何人も現れます。全員が全員そうではありませんが、それでもそのクズたちは犯罪行為をし、命を脅かすことも厭わないです。後半はそういう世界であり、本当の犯罪と命をかけたサスペンスです。

これはこれで前半とはまた違った楽しみがあります。そして仕事を得てどん底から脱出したと思ったらさらにどん底だった状態から頭を使い、協力者の助けで切り抜けていくシーンは読んでいて気持ちのよいところでもあります。

そのシーンは銀行マンとの駆け引きや妻とのやりとり、そしてラストの偉大なるミスター・モティヴェーターことバランタインとのやりとりです。

☆3

前半と後半で話はかなり変わります。どちらもサスペンスなのですが、前半の方が現実味を感じる分面白いです。

後半はその現実感が薄れているのが残念です。しかし、因果は巡り、誠実さが報われる読後感の良い話でもあります。

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