【本の感想】ダグラス・ケネディ(著)中川聖(訳)『ビッグ・ピクチャー』

ダグラス・ケネディ(著)中川聖(訳)『ビッグ・ピクチャー』(新潮社、1998年)を読みました。

ウォール街の大手法律事務所に勤め年収30万ドル以上の男が妻の浮気により衝動で殺人を犯し、全てを失います。そこから過去を消し去りながらも過去にやりたかったことを始め、再起を図ります。

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アメリカ的成功と不幸

ウォール街の法律事務所に勤務し、年収30万ドル。郊外には家では妻に息子二人が待っています。妻の浮気さえなければ幸せで成功している人物です。しかし、現実はそうではなく人生が狂い始めます。

仕事のきついプレッシャーをよそにしょっぱい嫁や子供とのやりとりは、丁寧に書かれているが故に残酷です。

特に妻は、「悪いのは全て旦那」と決めつけて散財と火遊びをしています。それはないだろうと思わずにいられません。

幸せが得られなかった主人公

ちょっとしたやりとり、小さな嘘などが緻密に描かれています。それがまた妻と子供を愛する一人の男性の哀愁と不幸を際立たせます。

なぜならば、愛は受け止められず、仕事のプレッシャーは常に薬と運動で押さえ込んでいる状態だからです。

1部と3部の対比

愛のない妻と愛のある女性、押し込めた夢と実現した夢と、1部では否定されたことが3部では肯定されます。ぱっと見は1部の方が幸せなのですが、3部とエンディングはまた違った幸せがあります。

他にも様々な対比があります。一番はエンディング前の衝動に関するところです。じっくり読むと感慨深いです。

☆3

大金を稼ぐこと。夢を叶えること。待ってくれる家族をもつこと。不幸な1部、証拠を隠滅する2部、新たな生活を始める3部と振り回された主人公を見ると、どれが幸せなのか、アメリカンドリームとは何かを考えさせられます。

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