【本の感想】ジェフ・アボット(著)佐藤耕士(訳)『図書館の死体』

ジェフ・アボット(著)佐藤耕士(訳)『図書館の死体』(早川書房、1997年)を読みました。

家族の介護のためボストンからテキサス州の田舎町ミラボーに帰郷した図書館長を務める三十代前半の男が主人公です。その図書館で前日口論した女性の死体が発見されたことから主人公は容疑者にされます。主人公は被害者が残した名前の一覧と聖書の引用を頼りに町で調査を始めます。

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図書館は関係ない

「図書館」が関係するのは主人公が図書館長であることと、第一の死体が図書館で発見されたことのみです。文献的な何かとか、博覧強記の何かで圧倒するようなことは起きません。「図書館」という言葉に惹かれてとりあえず読んだ身としては肩すかしを受けました。

面白いかというと可も不可もありません。しかし、つまらないかというとそうではありません。アガサ賞最優秀処女長編賞、マカヴィティ賞新人賞を受賞しているだけあって読ませる力はあります。

主人公の語り口

その力は主人公の語り口です。滑らかな口調で相手を非難する様には諧謔があります。たとえば冒頭(p.7)では以下のように語ります。

殺される直前にぼくと口論するのだから、ベータ・ハーチャーの迷惑ぶりにもほとほと困ったものだ。思いやりというものがまるでない。日頃からイエス・キリストとフリーダイヤルで直接つながっているかのように振る舞っているくせに、自分の運命が危ないことを、前もって察知できなかったのだろうか。

厭味な地方検事補に対する描写(p.68)では、

さらに芝居がかかった効果を添えるため、ビリー・レイは片手で髪をかきあげた。けれどもその髪はすでに薄くなりかけていて、かきあげるのに0.5秒ともかからなかった。頭頂部に振り注ぐ日射しが乏しい脳の発達を促進するという考えもなきにしもあらずだが、もともと精神的土壌が肥沃ではないから、無理な相談だった。

などと厭味を並べます。しかし、この滑らかな口調や斜に構えた姿勢が諧謔として成り立っています。厭味は相手を選んでいるため不愉快ではありません。

☆3

最後の一文は感動的です。それ以外はそれなりです。

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