【本の感想】ドナルド・E・ウェストレイク(著)木村二郎(訳)『斧』

ドナルド・E・ウェストレイク(著)木村二郎(訳)『斧』(文藝春秋、2001年)を読みました。

職を失った中高年の男がとった、ある意味で最強の再就職活動について描かれています。

その内容は、偽の求職情報を使ってライバルを殺し、自分がいるべきはずのポストの人物を殺すというものです。そんなイカれた行動が再就職の焦りとともに現実的に描かれていて面白いです。

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奇妙な現実感

狭い日本ではライバルの多さから荒唐無稽に思える設定ですが、広いアメリカではそうではないようです。

再就職のために殺人を犯す以外は家族思いの男です。殺人に後悔もしています。しかし、端々にそうでない黒いところが見え隠れしている様に不気味さを感じます。

次のターゲットは計画的に決めるのに、いざその段階になるとうまくいかず行き当たりばったりに処理していくこともあれば、慣れてこなすこともあります。その場慣れ感に心の壊れ具合を感じます。

そのようなアンバランスな心情と、次はどう対処していくのかというところが面白いです。

☆4

再就職しづらい年齢で家族にも責任のある立場でなければ荒唐無稽な話です。しかし、主人公のようにリストラを受けた中高年の中間管理職に近ければ近いほど、風刺のきついブラックユーモアだと、荒唐無稽な話だと笑い飛ばせなくなる後味の悪さが魅力です。

気がつけば平凡な男の狂気に引き込まれてしまいます。

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