【本の感想】ジェイムズ・ヤッフェ(著)小尾芙佐(訳)『ママは何でも知っている』

ジェイムズ・ヤッフェ(著)小尾芙佐(訳)『ママは何でも知っている』(早川書房、2015年)を読みました。

「探偵役のママと同じ土俵で推理ができること」と「探偵役のママの魅力」が本書の魅力であり、面白さではないかと思います。

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探偵役のママと同じ土俵で推理ができること

毎回、刑事のデイビッドが妻を連れ、実家へママを訪れます。ディナーで話されるのは捜査中の事件の話です。デイビッドが語る状況からママはいくつかの質問をしていきます。追加で何かが起きるなんてことはありません。会話や質問から新しい情報が分かり、真相に近づいていきます。

安楽椅子探偵モノの定番です。作中のママと与えられる条件は同じです。同じ土俵で推理を楽しむことができます。残念ながら私たちは1950年代から1960年代のアメリカはブロンクスに居るわけではありません。その点では不利ですが、大いに推理合戦をできるのではないかと思います。

探偵役のママに魅力を感じるか

一番のポイントはママでしょう。決して引かない強さをもっているのがママです。

ママの話し方は独特です。ママ周辺のご近所や親戚の話が突然出てきます。推理に無関係ではなく、ママなりの説明のやり方なのですが、一見すると無関係の話をしているように思えます。作中の頭の良い妻は冷静な突っ込みを毎回いれていますが、毎回手痛い切り返しをされてしまいます。

私がデイビッドだったら冷や冷やしっぱなしで推理どころではありません。しかし、語り部のデイビッドはこのような実母と嫁のなんとも心温まる不穏なやりとりをうまくかわしています。(そしてそこで熱くなることなく受け流します。出来た嫁です。)

そのようなやりとりがあっても事件は解決するので刑事たるデイビッドには良いのでしょう。しかし、このような実家でのディナーはごめんこうむりたいのが正直なところです。

よくしゃべり、冴える推理をし、息子の妻とは心温まる不穏なやりとりがあっても険悪にならない状況が本書の魅力だと思います。題名通り「ママは何でも知っている」ため、ママの名推理を楽しむも良し、心温まる不穏なやりとりを楽しむも良しです。

☆2

私はママのおばはん力(無関係そうな周辺の話をよくしゃべり、決してひかない強さと皮肉な切り返し)や実母と嫁のやりとりが苦手なのでそれほど楽しかったわけではありません。

ママの強さにミステリが迷子になってしまいました。

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